液化 CO₂の常温昇圧(EP)輸送向けカーゴタンクの生産体制を確立

日本郵船・KNCC・JFE 商事が CCS の社会実装に向けて前進

 日本郵船とそのグループ会社の Knutsen NYK Carbon Carriers AS (クヌッツェン・エヌワイケイ・カーボン・キャリアーズ、以下「KNCC 社」)、JFE 商事は、液化二酸化炭素(以下「LCO₂」)の常温昇圧(EP)輸送時に必要となる LCO₂輸送船カーゴタンクおよび陸上での一時貯蔵タンク「LCO₂-EP Cargo Tank」の材料となる鋼材の生産設備と生産能力の把握、製造コストの算出を完了させ、アジア域内における鋼材の安定供給にめどをつけた。

 本タンクは、常温昇圧方式「LCO₂―EP システム」(注 1)で使用される LCO₂輸送船カーゴタンクと陸上一時貯蔵タンク。材料には汎用性の高い炭素鋼を使用しており、既存の大径鋼管製造設備を活用し、機械による自動溶接で生産ができるため、大規模な製造供給体制を短納期かつ低コストで構築することが可能。

 3社は、2024年3月に締結した LCO₂の回収・貯留(以下「CCS」)に関する戦略的パートナーシップの覚書に基づき、タンクの安定かつ大量供給網の構築に向けた検討を進めてきた。引き続き、CCS 事業の早期の社会実装に向けてさらなる検討を進める。

各社の役割分担

  • 日本郵船:総合物流事業を国内外で展開する実績をもとに、本タンクの輸送をはじめとする CCS 事業サプライチェーン全体を検討する。また LCO₂輸送船の検討および海上輸送のコスト、運航シミュレーションを実施し、CCSバリューチェーン(注 2)の実現性について検討を行う。
  • KNCC:日本郵船のグループ会社で、低温低圧(LP)、中温中圧(MP)、常温昇圧(EP)輸送を提供し、自社で設計・特許出願済みの本タンクを使用した常温昇圧方式での LCO₂輸送に関する技術を有する。LCO₂輸送船の検討および海上輸送のコスト、運航シミュレーションを実施し、CCS バリューチェーンの実現性検討を行う。
  • JFE 商事:JFE グループの中核商社として鉄鋼周辺ビジネスに関する知見と国内外ネットワークを活かし、本タンク製造に必要な鋼材を供給し、サプライチェーン構築に貢献する。

(注 1) LCO₂-EP システム:CO₂を常温・昇圧状態(0〜10°C、35〜45 バール)で貯蔵・輸送するシステム。CO₂の取り扱いも容易であり、CO₂の液化および貯留層への圧入前に必要となる加温・加圧プロセスで要するエネルギーが相対的に少ないことから、CCS バリューチェーン全体を通じたカーボンフットプリントやコストの削減が期待できる。
(注 2)CCS バリューチェーン:CCS (Carbon dioxide Capture and Storage)は、火力発電所や工場などから排出される CO₂を回収し、安定した地下の地層に貯留を行うことを指す。回収地から利用地もしくは貯留地までは専用の LCO₂輸送船で輸送する。